車が壊れる前に治す

今日は衝撃的なことがありました。それは、大前提となっていることに疑問を呈している人に会ったことです。彼こそ本質論者だといえます。


歯を矯正すると、隙間ができます。そこは虫歯になりやすいわけです。そして、矯正歯科の先生に、「虫歯になっているところがあります。しかし、隙間がもう少し広がるまで治療できません。それで、予防歯科に行き、虫歯が悪化しないように磨き方などを教わってきてください。」そういわれ、予防歯科に行きました。


予防歯科医「歯を見させてもらいます」その間は暇なので思索に励みます。今日の問いかけは雑誌会(学士による英語論文紹介)で成果を上げるにはどうすればいいかでした。そんなことを考えていると。医者「写真を取らせてもらいます」手順は詳しくは書きません。しかし、写真を撮ることは結構手間がかかります。私(矯正歯科でも同じように写真をとったのに、またとるのか、これは改善すべき。友達も同じ検査を何度もしたといっていたなぁー、病院は改善点が多いね。抜本的な改革方法は病院を株式会社にするか、医者以外でも経営に参画できるように医師法を変える必要があるかな)


撮影が終わりました。
医者「矯正歯科でも撮影したのかな。無用な負担をかけてしまいました。でも撮ることになっているので、すみません。」
私「はい」(なんとぉー。この医者、顧客志向だ。凄い、大学病院にもこんな人がいるんだ。)


医者「さて、虫歯はありません」
私「矯正歯科の先生に、虫歯だと言われてきたのですが、、。」
医者「確かに、黒ずんでいる部分があります。しかし、そういったものは誰もが持っています。完璧な状態の歯などありません。日本ではそのような状態を虫歯とします。しかし、グローバルスタンダードでは虫歯ではありません。」
私「それならば、治療の必要は無いのですか?」
医者「はい、ありません。歯の再石灰化により自然になおります。」
私「矯正歯科のほうには、どのように伝えればよいでしょうか?」


医者「私のほうから話しておきます。しかし、いつも見解の相違があるので、論争になります。」
私「それは、大学病院内で、見解が統一していないということですか?」
医者「はい、それどころか、予防歯科でも見解を統一できていません」


そして、彼は語りだした。
「日本の歯学は、技術的な面に頼る傾向があります。そしてサイエンス的な考えは抜けています。今まで、虫歯は初期に発見して治療しましょう、と習ってきませんでしたか?」
私「習ってきました」
「私も30年前にそのように習ってきました。しかし、その考え方は間違っています。」
私「!!?」
医者は歯の再石灰化の仕組みを解説してくれました。そして、ある事実を提示しました。
「日本人が年間に消費する砂糖の量は19kgです、一方オーストラリアでは50kgです。しかし、虫歯の数は日本が倍以上に多いです。これは、虫歯といわれるものを日本では治療するのに対して、海外では再石灰化によって元に戻すためです。」


色々、語ってくれました。しかし、長いので、再石灰化の仕組みを要約すると下記になります。「虫歯菌は酸性状態で活動する。通常、口の中は中性である。食事をすると酸性になる。唾によって中性にもどる。唾液には歯を再石灰化する作用がある。歯は常に破壊と再生を繰り返している。中性状態を長く保てれば再石灰化できる。しかし、これらのことを定量的に量れないことが問題である」


私「先生の考え方はよく分かりました。そして正しいと思います。しかし、先生の考え方、つまり、治療せずに再石灰化するということになると、多くの歯科医の仕事がなくなりますよね?」
医者「無くなって構いません。車が壊れる前に治すのが医師です」
私(うはは、驚いた)「先生、私も同じ考え方です。つまり、病気になってから治療するより、病気の前兆を捉えて対策をし、病気にならないようにすることが大切だと思います。」
という具合で意気投合して語り合っていました。大学病院でこんな体験ができるなんて、運がいいです。ちなみに、私の「運がいい」の定義は「機会に対して準備ができていること」です。


虫歯の予防に興味がある人は予防歯科へ。この先生に診てもらいたいなら、名前を教えます。また、予防歯科は安く、初診料や検査を含めて1000円にならないはずです。


追記。以下は先生から得た知見です。歯は外側からエナメル質、象牙質、神経で構成されています。たとえ、虫歯が神経に達しても、神経を抜く必要はありません。神経の部分が新たな象牙質になるからです。このようにさまざまな防御策が備わっています。そして、銀歯にすることは、これらの作用を無くし、結局のところ、歯の寿命を縮めるとのことです。